④贈与の特性
贈与は諾成契約と呼ばれています。
「あげます」「いただきます」が成立して、初めて「贈与」となります。
◆「あげます」が成立しない例
おじいさんが認知症になった場合には、法律行為ができません。
なので、贈与が成立しないにも関わらず、おじいさんの預金口座から孫が勝手にお金を引き出す行為は、違法ですし、贈与は成立しません。
贈与が認められなければ相続財産となり、相続税の修正申告が必要となります。
また認知症を機に成年後見を活用した場合には、おじいさんの財産は勝手に動かすことができなくなります。
特に贈与などは、本人の財産を減少させるもので、特別の理由と家庭裁判所の許可なくしてはできません。
◆「いただきます」が成立しない例
贈与を受けることも法律行為です。
未成年者の法律行為は日常的な買い物以外は禁止されています。
その法律行為には、法定代理人(親権者)の同意が必要です。
20歳未満(2022年4月1日より18才以上は成年として扱われることになりました)の方への贈与の場合、贈与契約書の受贈者欄には親権者の署名と印が必要です。
また、相続税の税務調査でよく指摘されるのが、「名義預金」です。
孫本人が「もらった認識」がないにもかかわらず、預金通帳に入金がある場合には、その入金額は「名義預金」として認識され、贈与ではなく相続財産として、相続税課税されることとなります。
孫名義の預金であるにもかかわらずです。ご注意ください。
名義預金については、ブログ【 00028 名義預金について】をご参考下さい。
ただし、贈与税課税された方が良い場合もあります。
税務時効は7年ですので、7年を経過した贈与は税金が課税されず、また贈与されたものであるので、相続財産には含まれないこととなり、両方の課税を免れる結果となります。
余談ですが、事業承継において、株価が急上昇する自社株を、後継者である長男に贈与するのですが、節税が追い付かずに、長男の子供にも贈与する例があります。
長男の子供が、例えば小学生だったりすると、自社株式の持つ意味が理解できません。
この場合も「いただきます」が成立しない例となるでしょう。
なので親権者の署名は絶対に必要となります。
事業承継にまつわる贈与は自社株評価など複雑な作業を要する契約となりますので、実行される場合には、是非私達にご相談ください。