『 名義預金 』 という言葉を聞いたことはありますか?
相続税において、よく問題になるのがこの名義預金です。
相続税の税務調査において、もっとも注目されるのは現預金で、その現預金で特に調べられるのが、名義預金とさえ言われています。
国税庁が公表している、相続税の税務調査に関するデータによると、
税務調査において申告漏れ相続財産で最も多かったものは、現預金というデータがあります。
【平成29事務年度における相続税の調査の状況】
税務調査で、申告漏れと指摘されないようにするには、現預金をしっかり確認する必要があります。
そのためには、名義預金の有無というのが、非常に重要になります。
今回は、この名義預金について、解説していきたいと思います。
名義預金とは?
名義預金とは、その預金の名義となっている人の預金ではなく、別の人がその預金の名義人の名前を借りているだけの預金のこと。
預金口座の名義人と実際の所有者が違う預金ということです。
例えば、
・専業主婦など収入がない方が名義人となっている預貯金ですが、
実際は収入がある夫が稼いだお金である。(多額である場合)
・子や孫の名義で、祖父母や父母が預金口座を開設し、そこに祖父母、父母が、
自分のお金を預入している。
上記のような状態のことです。
昨今は、預金口座は、犯罪防止などの観点から、簡単に作れなくなっていますが、一昔前は、預金口座の開設は、わりと簡単に開設できました。
・妻の老後資金や、子や孫の将来(教育、結婚資金など)のためにお金を残しておいてあげよう。
・相続対策の一環で、自分の名義でない預金口座であれば、相続財産には含まれないだろう。
と安易に考えた祖父母や父母が、子や孫の名前を借りて預金している
などのような場合、その預金は名義預金とされ、夫や祖父母や父母の財産とされます。
申告漏れで最も多いのは、現預金
税務調査においては、単純に預金口座の名義人で判断するのではありません。
名義人が誰であるかは関係なく、実質的に誰の財産であるかで判断されます。
冒頭でもご紹介した、【平成29事務年度における相続税の調査の状況】によると、
相続税の税務調査で、申告漏れと指摘された現預金等は、1,183億円もあるそうです。
名義預金がどれだけあったかは不明ですが、
相続人が知らない、見つけられなかった被相続人の預金口座が見つかったという場合もあれば、配偶者や子、孫など、親族名義の預金口座が、被相続人の財産とされたというケースも多いはずです。
名義預金かどうかの判断
預金口座が、誰の財産となるのかは、預金口座の名義人ではないということは、説明した通りです。
では、どうやって判断されるのでしょうか?
税務調査においては、以下のようなポイントが争点となると言われています。
① 名義人が、その預金の存在を知っていたか?
・被相続人が、勝手に名義人の預金口座を開設していた。
・被相続人の遺品を整理していたら、名義人が知らない預金口座が見つかった。
などという場合は、名義人の財産ではなく、被相続人の財産となります。
少なくとも名義人が、その預金の存在を知らなかったのであれば、名義預金とされます。
② 名義人が、自分の財産であると認識しているか?
・被相続人から名義人への贈与契約がきちんと成立していない
贈与は、贈与者、受贈者、双方が合意していないと成立しません。
贈与契約が成立していると証明するためにも、贈与契約書は最低限必要だと思います。
※ 贈与税の申告をしていれば、贈与が成立していると勘違いされる場合もありますが、
贈与税の申告、納税をもって、贈与が成立したとは判断されません。
③ 名義人が、その預金を自分で管理していたか?
・預金通帳、キャッシュカード、は、被相続人が管理していた。
・預金通帳の口座の印鑑は、被相続人が管理していた。
・預入、満期手続きなどは、被相続人が行っていた。
などという場合は、名義人の財産ではなく、被相続人の財産となります。
その預金の通帳、キャッシュカード、印鑑などの管理は、名義人自身が行い、
名義人自身のために、生活費などで使っていることなどが、名義預金とされないためには、
最低限必要です。
④ その預金の財源は?どのように形成された財産なのか?
・贈与であれば、贈与契約が成立している証拠が必要
・自らの収入や相続などにより形成された範囲の財産か
※ 専業主婦である妻が、夫から生活費を受け取り、その残りであると主張するのであれば、
その金額が、常識の範囲内であれば、問題ないと思われます。
名義預金が見つかったら・・・。
もし名義預金が見つかったら、
相続税の申告の際には、被相続人の相続財産に含めなければなりません。
『 名義が違うから大丈夫だろう。』 と安易に思わないでください。
前述の通り、現預金は税務調査で、申告漏れと指摘される最も多い事項です。
また、名義預金がないかは、しっかり確認する必要があります。
故意に名義預金として相続財産を隠したとされれば、仮装隠蔽とみなされ、重加算税という重いペナルティを課せられる可能性があります。
本当に知らなかった預金口座が見つかったとしても、税務調査では意図的に隠したのでは?と疑われることも多いと聞きます。
まとめ
・税務調査で最も多い申告漏れは、現預金。
・預金口座は、口座名義人で判断されるのではない。
支配・管理基準(誰が支配、管理していたか)で、実質的に誰の財産か判断される。
・贈与は、贈与税申告、納税だけではダメ。
贈与契約書などにより贈与契約がきちんと成立しているか証拠を残した方がいい。
・名義預金は、重加算税となる可能性がある。