相続税の節税対策の一つに、養子縁組を活用するというものがあります。
平成27年からの相続税改正の影響もあり、活用される方が増えていると言われております。
今回は、その養子縁組の制度の仕組みや、注意点などを解説していきたいと思います。
●養子縁組の種類
養子縁組には、特別養子縁組と、普通養子縁組の2種類あります。
いずれの場合も、民法上は親子関係が成立しているため、法定相続人になります。
・特別養子縁組
特別養子縁組は、実親と子の法律上の親子関係を断ち、養親の実子となります。
保護者のない子や実親による養育が困難な子の健全な育成を図る仕組みです。
実の親と、親子関係を断つ、養親の実子となるため、ハードルが高いです。
少し古いデータですが、平成28年の年間成立実績が500件弱とのこと。
特別養子縁組は、家庭裁判所が認めなければ成立しません。
養子、養親ともに年齢制限があります。
原則として、養子となる子は、家庭裁判所への申立て時に6歳未満、養親は配偶者がおり、一方が25歳以上、もう一方が20歳以上でなければならないなどの要件があります。
何より、実親が養育できない特別な事情があり、養親の子となることが、その子のためになると家庭裁判所が判断しなければ、 認められません。
・普通養子縁組
普通養子縁組は、子が実親との親子関係は残したまま、養親の養子となります。
養子となった子は、親が、実親と養親の両方いることになります。
実親、養親、両方の法定相続人となります。
普通養子縁組は、特別養子縁組と比べれば、ハードルは低いですが、要件があります。
・未成年者を養子にする場合は、家庭裁判所が認めなければならない。
・15歳未満の子が養子となる場合は、実親の同意が必要。
・養子となる子は、養親より年下でなければならない。
相続税対策として養子縁組を活用する場合は、普通養子縁組の方だと思われます。
●養子である子にも平等に相続権はあるのか!?
TVドラマでの相続争い、遺産争いのシーンなどで、養子だから相続権がないとか、取り分が少ないというような表現を聞いたことはありませんか?
養子だからといって、相続権がない、制限があるなんてことはありません。
もちろん、養子だからと言って、取り分が少なくなるということはありません。
養子だから、相続放棄をしなさい!!というように強要するようなこともいけません。
また、遺産分割協議の場において、養子だから同席させないとか、協議に参加させない状態で行った遺産分割協議は無効となります。
● 孫を養子にする場合の注意点
相続税対策の一つで、養子を活用する場合に、孫を養子にする場合もあるかと思います。
孫は、原則法定相続人にはなりません。(親が亡くなっている場合の代襲相続を除く)
そのため、孫に相続させたい、法定相続人を増やしたいからなどの理由から、孫を養子にするというケースもあります。 この場合、知っておいていただきたい注意点があります。
・実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は、2人までにしなければ、
基礎控除等は変わらない。
詳しくは、【#00007 相続人に養子がいる場合②】 をご参照下さい。
・養子にしても、孫の相続分は、相続税の2割加算の対象となる。
相続税の規定で、相続する人によっては、相続税額が2割加算されるというルールがあります。
その対象者の中に、養子となった孫が含まれています。
国税庁 タックスアンサー 【 No.4157 相続税の2割加算 】 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4157.htm
・代襲相続により2人分の相続財産を受ける可能性がある。
普通養子縁組の場合、実親との親子関係も残ります。
そのため、稀なケースかもしれませんが、
以下のようなことが起きる可能性があります。
祖父:A その子である長男:B 、次男:C、
長男Bの子(Aの孫):Dを、Aの子(普通養子縁組)した場合、
Aが亡くなった場合、B、C、Dは、それぞれ1/3ずつ相続することになります。
ですが、AよりBが先に亡くなり、その後Aが亡くなった場合の法定相続分は、
Cは、1/3です。
Dは、Bの代襲相続として、1/3を相続し、
Aの養子であるもともとの分である1/3も相続します。
つまり合計で、2/3を相続することになります。
もともとBが相続する分で、その子であるDがいずれ相続するであろう財産ですが、
次男Cは快く思わないかもしれません。
そうなると、CとDとで、もめることになってしまうかもしれません。
・まとめ
相続税対策で、養子縁組を活用することは、効果があることではありますが、
デメリットもあります。
いざ相続となった場合に、トラブルの元になる可能性もあります。
養子縁組を活用する際は、その効果の検証はもちろん、
他の相続人、家族の了解を得ておく必要があると思います。
場合によっては、遺言書を残すなどの準備も必要かもしれません。