平成30年7月に、約40年ぶりに民法(相続関連:相続法)が改正されました。
その改正された主な内容を、数回にわたって解説していきます。
今回は、第3回目となります。
【3】特 別 寄 与 料
寄与分制度とは、相続人間(配偶者や子供)において、
被相続人(亡くなった方)の財産の維持増加に貢献した人がいる場合には、
その貢献(寄与分)をその人の相続財産に加えることができるという規定です。
しかし、寄与分では相続人以外の人は対象外でした。
今回の改正では「特別寄与料」という名称で、新たな制度が設けられました。
例えば、
相続人でない者(長男の嫁など)が、
亡き義理の父母である被相続人の財産の維持・増加に
「無償で」貢献した場合には、
相続開始後に相続人全員に対して、貢献度に応じた額の金銭の支払いを請求することができる。
この貢献を「特別の寄与」といいます。
◇「特別の寄与」の類型
① 療養看護型
被相続人の療養看護を行い、看護費用の支出を抑えることができ、
相続財産の維持に寄与した場合などが該当します。
報酬額×日数×裁量割合(0.5~0.7)というような計算方法で
計算される場合もあるようです。
同居の義父を5年間介護した場合の計算例の一例を例示すると、
報酬額(例えば時給1000円×8時間)×5年×365日×0.5=730万円
義父の死後、特別の寄与者は相続人全員に対して金銭を請求できます。
② 家業従事型
祖父の事業を永年手伝っており、お小遣い程度の給料で、稼業に真剣取り組んでいました。
そのため、事業は順調で、事業資金に困ったことはないなど、その孫の頑張りを「特別の寄与」として評価し、相続人全員に対し貢献度に応じた相当額の金銭を請求できます。
③ 金銭等出資型
被相続人のために、金銭等支出した場合です。
借金の肩代わりをした、不動産の購入時に資金援助した、自宅のリフォーム費用を負担した、長年にわたり生活費などを立替した場合などが該当します。
④ 扶養型
被相続人と同居するなどして扶養して、その生活費を賄い、相続財産の維持に寄与した場合などが該当します。
⑤ 財産管理型
被相続人の財産の管理を行ったことで、外部専門家などに支払う管理費用の支出を免れさせるなどして、相続財産の維持に寄与した場合などが該当します。
いずれも、お手伝い程度では、寄与としては認められません。
対象となるには?
対象となるのは「相続人以外の、6親等内の血族と3親等内の姻族」です。
請求期限は相続の開始を知ってから6か月以内、または相続の開始があってから1年以内です。
四十九日が過ぎたころに相続人全員に対して話をすることになるでしょう。
特別寄与料は、相続人に対して請求しますが、相続人との協議、合意が必要です。
そのため、看護日誌を付ける、金銭を負担した場合は領収書を保管しておくなど、証拠書類を保管しておきましょう。
協議では決まらない場合は、家庭裁判所に・・・
税務申告のことを考えると、相続開始から10か月以内に特別寄与料の額を決定するべきです。
しかし相続人に請求し、当人間での協議では金額が決まらない場合は、家庭裁判所に審判の申し立てを申請する場合ことになります。
そのように長引くときには、期限後とならぬよう申告期限までに相続税申告は済ませておき、処分決定後に速やかに税務処理することが求められます。
寄与者本人は期限後申告となり、特別の寄与料の負担者である相続人は更正の請求による還付となります。
しかし、相続税の総額は変わらないので、申告処理はせずに、相続人と寄与者の間で、税額負担額を加味した上での金銭のやり取りとすることも税務上問題はありません。
≪ 今回のまとめ ≫
今回の改正で、被相続人の相続財産の維持に寄与した人が、法定相続人でなくても、その寄与分を請求できるようになりました。
相続人以外の親族の苦労が報われるようになったと言えると思います。
ですが、この【特別の寄与】の制度ができたことで、相続トラブルが起きる可能性が高くなったとも言えます。
日頃からの話し合いや、被相続人の方が、生前に遺言書を作成するなどのトラブル回避が必要になってきたともいえると思います。
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