平成30年7月に、約40年ぶりに民法(相続関連:相続法)が改正されました。
その改正された主な内容を、数回にわたって解説していきます。
今回は第2回目になります。
【2】遺 留 分 - 遺留分侵害額請求権 -
遺留分とは、亡き父母の遺言により自分の取り分が少なくなってしまった場合に、
他の相続人に対し、相続財産を請求できる権利です。
配偶者と子供、父母に認められた権利で、法定相続分の半分と覚えておきましょう。
◇ 遺留分侵害額請求権
この遺留分についても民法の改正があり、「遺留分減殺請求権」という名称が、
『 遺留分侵害額請求権 』に変わりました。
名称が変わったのには意味があります。
改正前の減殺請求権は相続財産すべてについて及ぶもので、その権利は物権的効果があるといわれておりました。
今回の改正では「侵害額請求権」となり、相当額の金銭債権が発生します。
簡単に言うと、
改正前は、他の相続人は相続財産や相続人固有の財産から支払えば済みましたが、
改正後は、単純にお金の問題となり、選択肢がなくなりました。
これもスムーズな遺産分割を目的としているのでしょう。
◇ 例 示 解 説
例えば、
・相続人は、子供2人(長男、次男)
・相続財産が自宅のみ
・その自宅を長男が亡き父母の遺言により取得した
自宅を相続した長男は、次男から請求があれば、
その自宅の評価額の1/4を、次男に現金で支払わなければなりません。
自宅を相続したことにより、長男には責務が課せられることになります。
◇ 遺留分侵害額の算定方法
遺留分侵害額の算定方法は、以下のように計算します。
遺留分 (財産の額×遺留分権利者の法定相続分×1/2)
- 遺留分権利者の特別受益の額
-(遺留分権利者が遺産分割において取得した財産の額-債務の額)
ここで気を付けなければならないのは、
遺留分計算式にある「財産の額」には、遺言や遺産分割協議書に記載されない
次の2つを含むことです。
(1)生命保険金
(2)相続開始前10年以内に贈与された財産
(今回の改正で10年以上前の贈与は加算しなくてよいことになりました。)
これらは特別受益の額として遺留分の計算基礎である相続財産に加算されるので、
以下のようなケースでは、注意が必要です。
ア )円滑な事業承継を目指して、生前に自社株を後継者である相続人に贈与した場合
イ )生命保険の相続税非課税枠の利用を目的に、受取人を相続人としていた場合
ウ )家族信託の活用を通じて、委託者(被相続人)の死亡を契機として、
受益者移転を行った場合
など、一部の相続人に財産移転を図った場合には、相続人間に不公平が生じ、遺留分侵害となる可能性がありますので、注意が必要です。
≪ 今回のまとめ ≫
・遺留分は、遺言等で取り分が少なくなった場合、他の相続人に対し相続財産を請求できる権利。
配偶者と子供、父母に認められた権利で、法定相続分の半分
・今回の改正で、遺留分侵害額請求権となり、金銭で負担。
・遺留分 (財産の額×遺留分権利者の法定相続分×1/2)- 遺留分権利者の特別受益の額
-(遺留分権利者が遺産分割において取得した財産の額-債務の額)
・計算する際の財産の額には、生命保険金や相続開始前10年以内に贈与された財産も含まれる。
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ブログ【 #00057 平成30年民法改正1】
ブログ【 #00059 平成30年民法改正3】
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