相続税の納税負担を減らすためには、「プラスの財産」の評価額を少しでも抑えることと、
「マイナスの財産」の計上漏れを少しでも無くすことが肝要です。
その「マイナスの財産」である「債務控除」の範囲についてご説明します。
債務控除には、大きくわけて2種類。【 債務 】と【 葬式費用 】
相続税法において「債務控除」と呼ばれるものは2種類あり、
「債務」と「葬式費用」に分類されます。
今回は、上記のうち、「 債務」について、ご説明します。
債務控除 【 債務 】 について
まず「債務」と呼ばれる分類としては、
・金融機関等からの借入金
・事業用の仕入れ代金の買掛金
・準確定申告による所得税の納税額
・入院していた病院への未払い費用
・未払いの税金(固定資産税、住民税など)
・不動産事業を営んでいた場合、返還の必要がある敷金・保証金
などがあります。
金融機関等からの借入金
「借入金」については、一般の金融機関における借入金もあれば、
ケースによっては、いわゆる「サラ金」などでの借入金の存在が明らかになるケースもあります。
借入金であれば、相続税申告の手続き上は「債務控除」として相続財産から控除していくことが可能ですが、
ご遺族である相続人の方々が予期せぬほどの高額な借入金の存在が明らかになった場合は、
別個で「相続放棄」の手続きも選択できます。
相続放棄は3か月以内
この「相続放棄」の手続きは、お亡くなりになってから「3カ月以内」という短い期限のため、
なかなかタイトなスケジュールが必要になってきます。
また、一度「相続放棄」の手続きを選択すると、その後の「撤回」が出来なくなります。
お亡くなりになった方の財産の洗い出しを進める過程にて、早め早めのご判断が必要な手続きですので、
慎重さと迅速性が求められます。
入院していた病院への未払い費用
次に、お亡くなりになった方が生前に治療・入院等で利用していた「病院への未払い費用」についても、「債務控除」として相続財産から控除する事が可能です。
控除の対象になるのは、お亡くなりになった時点で「未払い」の分です。
すでに支払いが済んでいる治療費・入院費用などは、「相続税申告」ではなく、
所得税の「医療費控除」の対象として税金負担の軽減に繋がる可能性があります。
不動産事業を営んでいた場合、返還の必要がある敷金・保証金
お亡くなりになった方が「不動産賃貸業」などを営まれていた場合、
「賃料」などの普通預金へ入金されるものの認識は容易にできますが、注意が必要なのが、
当初の賃貸契約の際に受領していた「返還する必要のある敷金・保証金」です。
賃貸借契約書などを確認して「敷金等」の存在の有無を確認するなどして、
「債務控除」の計上漏れとならないようご注意ください。
また、この「敷金等」は、将来的に返還することになるべき「債務」ですので、
その評価方法は預かっている「敷金等の額面額」ではなくて、返還するべき「敷金等」の金額を
今現在の価値に引き直した価額( 複利現価額 )を用いる必要があります。